人狼と天使のプレセピオ—人狼×討伐のメソッドI—
MF文庫J第12回新人賞の佳作の作品。
「人狼ゲーム」がベースとなった物語となっていました。「人狼ゲーム」を知らなくても楽しめるとは思います。
本作での人狼は1年間に1人、人間を喰らわなければ、その命を保てない存在です。
元々は狼を神と崇める部族の森の奥で、捧げられる生贄を喰らって生活していました。とこが、森林開発がすすみ、部族は消え去り、人狼は人肉を得ることができなくなりました。
生贄を得ることができなくなった人狼は、人間社会に溶け込み、人間を襲うようになりました。
人間を襲って生命を維持するようになった人狼に対抗するため、人狼討伐の専門職「討伐官」がうまれました。
主人公・連野壮真とヒロイン・篠崎樫乃は新人討伐官です。
以下、感想です(ネタバレ含む)
あらすじ
あらすじを読んで面白そうと思い購入。あらすじを読んだ段階で、新人討伐官の連野が、人狼「VOLF」というのは予想がつきます。ただ、あらすじにある「暴いてはいけない真実」というのが、主人公=VOLF(ヒロインの両親の仇)というのは、単純すぎるわけで、どんな真実が隠されているのか、わくわくしながら読みました。
MF文庫Jの特設ページのあらすじを載せておきます。
“人狼”、彼らは一年間に一人、人間を喰らわなくては、その命を保てない。
カナガワ3区の新人討伐官・連野壮真は、人に化けて人を喰らう人狼を討伐するため、自らを天使と名乗る同僚の討伐官・篠崎樫乃と任務に励んでいる。共に両親を人狼の手によって失った二人。だが、二人は初めての囮捜査で偶然にも、樫乃の両親の仇である、遺体にV字の傷跡を残す・侵災の人狼《VOLF》の犯行の痕跡を発見する。 しかし、樫乃が人狼の正体を見破ることができる《暴きの目》を発現させてしまったことで、二人の運命は大きく変わってゆくとこととなり——!?
第12回MF文庫J新人賞受賞、鮮烈の小説デビュー作。これは——決して暴いてはならない真実の物語。
巻の構成
- 序章
- 第一章第一節 怪物と英雄
- 第一章第二節 聖夜の綻び
- 第二章第一節 VOLF
- 第二章第二節 英雄の陥落
- 第三章第一節 邂逅の時
- 終章
感想
序章~第一章第一節は、世界観、登場人物の紹介でした。主人公・連野壮真、ヒロイン・篠崎樫乃、化物である侵災の人狼《VOLF》、VOLFと対になる英雄的な天才討伐官・吉田射京。あらすじを読むと主人公は連野壮真なのですが、序盤で出てくる吉田射京も主人公でした。
特徴的なキャラが多く、こういう世界観は好きです。
第一節の終盤で、遺体がみつかり、VOLFの捜査がはじまります。留学生も出てくるのですが、初めは「この噛ませみたいなキャラは必要なのかな?」と思いましたが、駆け引きで重要な役割が与えられていました。
第一章第二節ではヒロインに《暴きの目》があることが明らかになります。
訓練なしに能力が発揮されることはありませんが、覚醒したら主人公の正体がばれてしまう。主人公はヒロインを殺害するしかなくなります。
さらに、天才討伐官はプロファイリングの結果、VOLFの正体は新人討伐官ではないかと疑います。第二章に入り、天才討伐官・吉田射京と化物VOLF(連野壮真)の駆け引きがはじまります。
ここまではごちゃごちゃしていて、盛り上る箇所もあまりなく、読むのがつらかったです。
第二章に入ってからは、徐々に盛り上がってくるのにあわせて、どんどん読みすすめました。多少強引な部分(ご都合主義的な部分)がありましたが、駆け引きは楽しめました。
そして、最後の第三章。隠されていた真実が明かされます。真実が明かされていく過程は、ページをめくる手がとまりませんでした。
快楽殺人のように、無差別に多数の人間を殺した侵災の人狼《VOLF》。全てヒロインのためだったというのは驚きました。
私としては、かなり好きな部類に入る作品ですが、かなり好き嫌いが別れるのではないかと思いました。
サブタイトルにIのナンバリングがされていますが、2巻出るのかなぁ。2巻出るなら、主人公は吉田射京?